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第2回 芸術教養学科公開講座「教師のための日本音楽入門」報告

第2回 公開講座「教師のための日本音楽入門」報告

今回の公開講座は、すでに夏休みも終わり授業が始まっている学校も多い中で、新潟県、神奈川県、東京都の先生方が参加して下さいました。2日間とも、活躍中の演奏家をゲストとして迎え、受講された先生方に伝統音楽を体験する時間を用意しましたので、本報告の最後にご紹介するように、受講された先生方も充実した時間を過ごされたとのことでした。

【第1日目 身近な楽器から伝統音楽にアプローチ】

受講者:小中学校教員、社会教育関係者
ゲスト:望月太左久氏(歌舞伎囃子「菊音会(きくねかい)」主宰)

~講座内容~

生活の中にある日本の音文化について話す講師。教室には、金属の楽器、革の楽器、木や竹の楽器が並べられ、受講生はそれぞれに触れて音を出して、伝統音楽の音を体験しました。

ゲストでお招きした望月太左久氏が、歌舞伎の黒御簾で、大太鼓で演奏される自然描写の表現を聞かせて下さいました。歌舞伎独特の長いバチ(長バチ)を使って、川の流れる様子(水音)、海の波が寄せてくる様子(波音)、風が板戸に当たる様子(風音)、お化けが登場する様子(ドロドロ)など、同じバチで打っても、大太鼓の革にバチをどのように当てるかによって様々な音色になることに一同驚きました。また、頭部に布を巻いた バチ(雪バイ)を使って、雪が降っている様子(雪音)の関東と関西のテンポの違いを聞かせて下さいました。そのあとで、受講生も大太鼓による自然描写の表現を体験しました。

「和太鼓」と言う言い方は、歌舞伎音楽の世界ではあまり用いないことについてもお話しがあり、教育の世界と現場との用語の違いも浮き彫りになりました。

【第2日目 日本語を歌ってみよう】

受講者:小中学校教員、社会教育関係者
ゲスト:杵屋勝四郎氏(長唄 唄方)

~講座内容~
日本の伝統的な唄・歌について、講師から概説がありました。

日本の声の音楽の点とも言うべき「警蹕」について、天台声明の博士(はかせ・楽譜のこと)についての解説が行われ、受講生にも「警蹕」や「声明」を唱えて体験してもらいました。

次に、ゲストの長唄唄方の杵屋勝四朗氏による「長唄」の音楽理論のお話と、「外記猿(げきざる)」の体験。長唄研精会の楽譜を見ながら、楽譜の読み方、声の出し方、音と音をつなぐ技法などを勉強しました。最後に、中学校音楽の教材として取り上げられている「長唄 勧進帳」の「旅の衣はすずかけの~」を皆で唄ってみました。伝統音楽の分野で様々な活動をしていらっしゃる杵屋勝四郎氏のお話しは、西洋音楽を中心に学んできた先生方にも分かりやすく好評でした。高音域の声を出すことに重要性のある長唄は、音楽教育で体験される日本の伝統音楽の「歌」として、最適の素材かもしれないと実感した時間でした。

最後に、当日受講された先生方の感想を一部ご紹介します。

「諸学校で音楽科を担当されている先生方にとりまして、現在は新学習指導要領に示された内容を授業へと具現化することについての研究を進めている最中にありますが、「日本音楽」とりわけ「我が国の伝統的な歌唱」については、苦慮されている方も多いと推察します。そのような状況において、今回の公開講座は真に時機を得たものだと思います。」

「長胴太鼓はバチや奏法によって実に多様な表現が可能であるということを響きを通じて知り、その奥の深さも垣間見ることができました。音楽科教育の中の「創作」の分野で教材化を図ることが有効なのではないかと考えています。」

「台詞のように唄う唄い方、アクセントのところを裏声で憂いや色っぽさを出すとか、長唄らしさのいくつかや狂言との関連とか印象的なお話をいくつもお聞きすることができました。」

2010年09月30日(木) | 講座・公演